大ヒット映画、新海誠監督「天気の子」。
「この映画は自分のための映画なんだ」と思ってしまうシンクロ感があり、すぐに大好きな映画になりました。
そんなわけで、この映画の曲に振付をしてみることに。
クライマックスのシーンで流れる「グランドエスケープ 」です。
今回はこの振付について、解説をしてみたいと思います。
「振付師ってこんなこと考えて振付してるんだな〜」なんて思ってもらえたら幸いです。
なお、基本的に「天気の子」のネタバレはありませんが、
(ネタバレあり)と書かれた一番最後の段落だけはネタバレを含みますので、これから観る予定の方はそこだけ飛ばして読んでくださいね!
映画の美しさを伝えたい。美しい空も大切!
もちろんダンスも大切ですが、映像の美しさも大切。
空が美しい夕方を狙って撮影し、編集でもなるべく空の色を大切に調整しました。(動画編集は素人ですが…)
撮影場所は山梨の自宅近くの田んぼです(笑)ド田舎なので通行人を気にせず撮影できます。田舎ってイイネ。
衣装は劇中の「水の魚」をイメージ
美しさと言えば衣装も大切。作中に出てくる「水の魚」をイメージしました。
数年前にウラハラ(裏原宿)で買っておいた衣装、やっと日の目をみてよかった!
「天気の子」ならやっぱり傘!
この作品ならビニール傘という小道具は外せないなと。
00:58で、自分を隠したかったので、不透明なビニール傘を用意しました。
さて、ダンス作品ではしばしば使われる「小道具」。
この曲に限らず言えることなのですが、小道具というのは振付において、利点もあれば弊害もある、諸刃の刃だと思っています。
もちろんメリットは、世界観や設定をより具体的に伝えられることですが……
実はいいことだけじゃない。ダンスで小道具を使う利点と弊害
小道具は多くの場合「手に持つ」必要があります。
手は、体の中で最も表現力がある部分。
その貴重な部分を「小道具を持つ」ことに使ってしまい、表現の幅が狭まってしまうのです。
特に今回のようなソロであればなおさら。
それ以外にも、小道具の重さによっては身体のバランスが変わって踊りにくくなったり、
小道具を持つタイミング、下ろすタイミングや場所なども考えておく必要があります。
今回は、傘を持つタイミングを後半に持ってくること(00:54でカメラオフしている間に傘を持っています)、
傘を置く動作もダンスとして成立させること(01:31)で、
利点を活かしながら、小道具のデメリットを感じさせないよう構成しました。
この振付のために傘を使った!一番のお気に入りポイント
そんなわけで今回も、傘を使うか迷いつつ制作開始しましたが、
「夢に僕らで帆を張って(01:14)」の振付が出てきたときに「これだ!これは傘を使うしかない!」と思いました(笑)
帆=傘に見立て、それを仰ぎ見る仕草。
劇中でキーになる廃ビルや天気を仰ぎ見るシーンにもつながります。
なにより広い空をバックにダイナミックな身体表現、しかもそれがサビの始まりというのがすごくアツいなと。
この振付で一番お気に入りのポイントです(照)
傘と肩を組む?!(笑)
「あとはどうにかなるさと肩を組んだ(01:27)」 これはもう、遊びですね(笑)こういう遊び心は、踊っていてもつい笑顔になるポイントです。
見る人に気づかれなくても、踊り手に愛される振付(ネタバレあり)
最後に、傘を持たないシーンから1つ解説。 「叶わぬと知っていながら(00:26)」では、左手の薬指を大切にそっと触ります。
少しネタバレになってしまいますが、
「天気の子」登場人物の一人須賀圭介(穂高を雇う怪しいライター社長)が、死に別れた奥さんとの指輪を大切にしていて、度々指輪を触るシーンが出てきます。
劇中後半でも穂高が指輪を贈るシーンがありますし、指輪はこの作品のキーアイテムですね。
須賀さんがもう奥さんに会えないと知りながら指輪と身につけ続けており、それは「叶わぬと知っていながら」という歌詞にもリンクするので、この部分に指輪と振付を取り入れました。
こういった部分は、パッと見ただけでは気づかれないと思いますが、実はお仕事の振付では重要な要素だったりします。 「この部分は〇〇の意味でつけた振付です」とお伝えすると、だいたいクライアントさんや踊り手さんは喜んでくださいます。
踊る人が愛せる振付を作る。これも振付師の大切な仕事なんじゃないかなと思うのです。
まとめ
以上、振付師本人による振付解説でした!「天気の子」とっても美しい映画なので、まだの方はぜひ観てみてくださいね!
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